一度作成された遺言を状況の変化などで、内容をやり直したい場合があると思います。

そんな時に、作成した遺言のやり直すにはどうしたらいいのでしょうか。

 

遺言の撤回

撤回の要件

撤回時期

遺言を作成してからその方が亡くなるまで、いつでも撤回することができます。たとえ、遺言によって財産をもらえることになっている人がその遺言の内容を知っていたとしても、その人の了解を得る必要はなく自由に撤回することができます。

 

撤回者

遺言を作成した本人に限られます。

 

撤回の範囲

必ずしも遺言の全部を撤回する必要はなく、その一部だけの撤回もできます。

 

撤回の方式

撤回の方法は、遺言によって行います。

遺言の方式は、自筆証書遺言や公正証書遺言などの方式がありますが、撤回する遺言と同じ方式でなくても良く自筆証書遺言を公正証書遺言で撤回することも可能です。

また、遺言の方式による撤回は新しく遺言を作成することになりますが、これには「前の遺言を撤回する遺言を作成する方法」、「前の遺言を撤回して新しく遺言を作成する方法」、「撤回遺言をせずに前の遺言と抵触する新たな遺言を作成する方法」があります。

 

法定撤回

遺言の撤回は、通常は前の遺言を撤回するという内容の遺言を新たに作成しますが、次のような場合も撤回があったものとみなされます。

 

 

1⃣前の遺言と抵触する遺言がなされた場合は、抵触する部分について前の遺言を撤回したものとみなされる(民法1023条1項)

例:前の遺言で土地を長男へ相続させるとしていたが、新たな遺言でその土地を次男へ相続させるとした場合など

 

2⃣遺言と抵触する生前処分があった場合は、抵触する部分について遺言を撤回したものとみなされる(民法1023条2項)

例:前の遺言で土地を長男へ相続させるとしていたが、その土地を生前に売却した場合など

 

3⃣遺言者が遺言書を故意に破棄したときは、破棄した部分について遺言を撤回したものとみなされる。(民法1024条前段)

 

4⃣遺言者が遺贈の目的物を故意に破棄したときは、破棄した目的物について遺言を撤回したものとみなされる。(民法1024条後段)

 

 

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第1023条
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
第1024条
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

 

遺言の撤回をさらに撤回した場合

遺言が撤回されたときは、遺言は初めから存在しなかったことになりますが、遺言者が遺言を一度撤回したがその撤回することをさらに撤回した場合はどうなるでしょうか。

この場合は、一旦撤回された遺言の効力は復活しなこととなり遺言は初めから存在しなかったことになります。

ただし、詐欺や強迫によって遺言を撤回させられた場合は、その撤回行為を取り消すことによって遺言の効力が復活することになります。(民法1025条)

(撤回された遺言の効力)
第1025条
前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。