ポイント

①「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」であれば、「公正証書遺言」がオススメ
②「自筆証書遺言」の危険性を知っておいてください
③誰が読んでも「一つの意味」だけで受け取れる文言で作成すること

遺言は、「公正証書遺言」がオススメです

費用面で許されるようであれば、極力「公正証書」で遺言を作成することをお勧めします。
理由としては、当事務所に持ち込まれる「自筆証書遺言」の多くは、遺言者がご自身で専門家のアドバイスを受けずに作成されたものであることが多く、そのため、必要な「要式」を満たさない「無効の遺言」であることがとても多いからです。

せっかく作成した遺言が無効になってしまうと、本人が亡くなった後の遺産分割は「協議」によるしか方法がありません。
本人が、どれだけ生前に「キミに財産をあげる」と口頭で約束してくれていたとしても、「有効な書面=有効な遺言書」として残っていない以上、その口約束には何の効力もありません。

それだけ、遺言には「要式」が要求されますので、当事務所では「最初から要式を満たている遺言=公正証書遺言」をお勧めしています。

 

自筆証書遺言の危険性

自筆証書遺言には他にも危険性が潜んでいます。
「自筆証書遺言」は、原則「本人が一人で書く遺言」ですので、遺言を作成した時点での本人のアリバイがありません。
アリバイとは、「本人が自らの自由な意思で作成したということを示す客観的な証拠」のことです。

ひょっとしたら、遺言作成時に、本人が第三者から強迫を受けながら作成した遺言かもしれませんし一時的に心身を喪失している状態(酩酊状態、病気等で意思能力が低下している状態 など)で作成しているかもしれません。もしくは、一部の相続人から懇願されて本人の意思とは裏腹に仕方なく作成した遺言なのかもしれません。

このように、本人が死亡した後、自筆証書遺言が発見された際には、もはや「本人の真正な意思で作成された遺言かどうか」を確かめるすべはありません。

これに対して、「公正証書遺言」の場合は、「公証役場」に於いて「証人2名」の立会いのもと、「法務省から嘱託を受けた公証人」が「遺言の全文を読み上げることで本人に確認」し、「本人の真正な意思に基づく遺言であると確認」したうえで、公正証書遺言は作成されます。
公正証書で遺言を作成するということは、「本人の真正な意思で作成された遺言」であるということが明らかになります。

 

遺言は「文言」が大切です。「以心伝心」は通じません!

「遺言を作成する」場合は、記載する文言に細心の注意を払わなければなりません。
これは、「自筆証書」「公正証書」を問わず(公証人が作成した遺言書であったとしても、内容が誤っている可能性はゼロではありませんので)、書面捺印をする前に文章をよくよく読み返しましょう。

特に、「誰が読んでも一つの意味だけで読み取れる文言」で記載するように注意しなければなりません。
例えば、不動産を複数お持ちの方が遺言を作成される際に、「私の不動産は長男と次男に相続させる」と遺言書に記載したとしましょう。

本人の死亡後、この遺言書を最初に読んだ人は、おそらく「どの不動産をどちらに相続させるのか」もしくは「それぞれの不動産をどれだけの配分で長男と次男に相続させるのか」、といったことがわからず、混乱すると思います。

この場合であれば、「A、Bの不動産は長男、C、D、Eの不動産は二男へ相続させる」と記載するか、「すべての不動産は、長男と次男に2分の1ずつ相続させる」といったように、誰が読んでも意味が一つだけで読み取れる文章にしないといけません。遺言書上の他の文章との関係性にもよりますが、場合によっては法務局において「私の不動産は長男と次男に相続させる」という箇所の文言が無効と判断されて、登記申請(不動産の名義変更のこと)が受付けられない可能性があります。

「こう書いておけば、あとは家族が意図を汲み取って、いいようにやってくれるだろう」という以心伝心は通用しません。
それだけ、遺言書の文言というのはとても大切です。