民法改正で変わる相続② 「持戻し免除の推定規定」

今日は、民法改正シリーズ第3弾をお届けします。

②「持戻し免除の推定規定」
現在の民法では、居住用不動産を贈与等した場合は「特別受益」と言って相続時に贈与した価格が加算(持戻し)されて計算される場合があります。   特別受益とは

(例)生前に居住用不動産の2分の1を贈与した場合
相続人:配偶者(相続分2分の1)と子2名(相続分各4分の1)
遺産:居住用不動産(持分2分の1)評価額2,000万円
預金など3,000万円
配偶者に対する贈与:居住用不動産(持分2分の1)評価額2,000万円
贈与を含めた財産額:7,000万円

この場合、原則として遺産の先渡しをうけたものと取り扱われるため、配偶者が最終的に取得する財産額は、結果的に贈与がなかった場合と同様になり、
(遺産5,000万円+贈与分2,000万円)×配偶者相続分1/2-2,000万円=  1,500万円となり、1500万円+贈与分2,000万円で合計3,500万円となります。

現行法でも、亡くなった方が相続時に贈与等した財産額を計算に入れなくてもいいという意思表示(これを持戻し免除の意思表示といいます)をしていた場合は、贈与等した財産額は計算に含めずそれぞれの相続人が取得する財産額を算出することになります。

上記の例で計算すると、
遺産5,000万円×配偶者相続分1/2=2,500万円
2,500万円+贈与分2,000万円で合計4,500万円となり、より多くの財産を取得することができます。

この持戻し免除の意思表示ですが、亡くなった方がこのことを知らず意思表示をしていないことが多いと思われます。
そこで改製相続法は、この持戻し免除の意思表示について推定(意思表示があったであろうとみてもらえる)する規定を創設しました。これにより持戻し免除の意思表示がされていない場合も意思表示が推定されます。
推定されるには要件があり、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産の遺贈または贈与があった場合に推定されることになります。

留意点は、20年未満の婚姻期間の場合や配偶者以外への贈与等はこれまで通り持戻し免除の意思表示をするか否かの判断は必要であることです。

今回の改正は、改正の検討時に配偶者の相続分の引上げが議論されるなど配偶者の保護がテーマの1つとなっているようです。