民法改正で変わる相続①-ⅰ 「配偶者居住権」

①居住権の創設

「配偶者の住む権利」

居住権が創設された理由は、配偶者の住む権利を保護するため創設されました。
この居住権は2種類あり、「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」があります。

「配偶者居住権」
現行法では、一般的に不動産は相続財産の中では大きな割合を占めることが多く配偶者が住んでいた不動産(被相続人の所有)を相続により取得することとした場合、それだけで相続分相当を取得することとなり、他の金融資産を取得することができずその後の生活費に困るといった事が起こりかねません。

例えば、4人家族の場合(亡くなったのは父、相続人は母と子2人)で財産は自宅不動産(価格2000万円)、預金(2000万万円)のとき、母が今後も居住するため不動産を取得した場合、法律で決められた配分(配偶者1/2)だと不動産だけ相続し預金はもらえないということが起こります。(※もっとも子の合意があれば、配分は自由にできます)
配偶者居住権によりこういった事態を回避することが期待されています。(不動産の所有は他の相続人が相続し、配偶者は住み続ける権利を取得)

この権利の設定は、
①遺産分割により、配偶者居住権を取得するものとされたとき
②配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき

が必要とされ、原則としては相続人での合意、被相続人(亡くなった方)の意思により設定されることになります。しかし、他の相続人が合意しないときに特に必要があると認められる場合は裁判所の審判により配偶者居住権が認めれるケースもあります。
この権利の存続期間は原則終身(合意により期間を設定することもできます)とされ、無償で使用及び収益することができます。

配偶者居住権の設定により、配偶者は不動産を取得することなく居住する権利が保障されて相続財産の取得額を減少させ、他の預貯金などの金融資産を取得する割合が増加することが見込めます。

留意点としては、
①建物が亡くなった方と配偶者以外の者との共有である場合は設定できない
②配偶者居住権は登記を備えなければ対抗力がない(他の人に権利を主張できない)
③改築や増築、第三者に使用・収益させる場合は建物の所有者の承諾が必要
④配偶者居住権の財産的価値の評価方法はどうなるのか?(不動産の所有ではなく、住む権利の価値)

などがあり設定する場合は将来を見据えて検討する必要があります。

配偶者短期居住権については、また次回に。