7/1施行 相続法改正① 預貯金の払い出し制度

みなさま、こんにちは。
今日は、今月から施行された法改正の内容についてご案内します。

 

預貯金の払い出し制度

金融機関から預貯金が引き出せない理由

平成28年12月18日まで

平成28年12月18日までは、預貯金は法定相続分までは各相続人が単独で引き出しできるというのが法の建前でした。

これは、金銭債権のように性質上分けることが可能なものは、相続の発生と同時に、法定相続分どおりに何らの行為を要することなく各相続人に分割されるという「当然分割」であるとする判例があったからです。

しかし、金融機関においてはその当然に分割された各々の相続分の範囲で単独での払い出しが法律上可能であるという建前だったにもかかわらず、遺産分割協議書や法定相続人全員の同意がなければ払い出しに応じないということがありました。

金融機関としては、払い出した預貯金が本来は権限のない者への払い出しだった等、金融機関が相続人間の紛争に巻き込まれることを防止するためでした。

 

 

平成28年12月19日以降

平成28年12月19日以降、最高裁は預貯金に関して上記の「当然分割」を否定し、遺産分割協議の対象となる財産であると判断しました。

この判例変更により、共同相続人のうち1人が単独で預貯金を引き出そうとしても、遺産分割協議で取得する相続人が決定されるか、他の相続人全員の同意がなければ、預貯金の引き出しができないことになりました。

ですので、以前からの金融機関の取扱いを認めるものとなりました。

 

改正の趣旨

判例変更によって、預貯金を引き出すには遺産分割協議を成立させるか、相続人の全員の同意を得ないといけないとなると、葬儀費用の支出が必要なときや亡くなった方の預貯金を生活の支えとしていた場合は、すぐにでも引き出したいのに時間がかかってしまうという困ったことが起こります。

こういった事態に対処するべく、今回の改正によって二つの対応策が示されました。

一つは、裁判所の仮処分手続きを利用する方法、もう一つは、一定額までですが払い出しを行うという方法です。

 

裁判所による仮処分手続き

裁判所に遺産分割の審判又は調停の申立てがあった場合に、相続財産に属する債務の弁済や生活費の支弁等のために預貯金を仮に取得させる制度です。

 

要件

①申立て

遺産分割の審判又は調停の手続きの申立てがなければなりません。

②預貯金引き出しの必要性

相続財産に属する債務の弁済や生活費の支弁のためなどの事情が必要になります。

③他の相続人の利益を害さないこと

「他の相続人の利益を害さない」については裁判所の判断に委ねられるので現時点では具体的にどういった場合なのかは明らかでないので、今後の判断の積み重ねを待つ必要があります。

 

効果

上記の要件を満たした場合は、裁判所が「遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部」を申立人または相手方に仮に取得させることができます。

具体的には、裁判所から仮処分命令が発令され、この書面を金融機関に提出することで預貯金の払い出しを受けることになります。

 

メリット・デメリット

メリットは、他の相続人間で争いがある場合でも、裁判所の判断を得られれば仮に預貯金の払い出しを受けることができることです。

また、払い出し金額について特に上限は決まっていません。

デメリットは、遺産分割の審判又は調停を申し立てる必要があり、必要な資料も多く準備しないといけません。

また、裁判所の判断を仰ぐという性質上、審理の期間が一定程度必要となり少なくとも1か月以上はかかると予想されます。

 

一定額の払い出し

上記の裁判所の手続きを利用すると、手間や時間がかかってしまいます。

より簡易な方法として、法定相続分の3分の1まで預貯金の払い出しを認めるという方法が規定されました。

 

要件

預貯金が遺産に属することのみです。

 

効果

払い出しを受けようとする相続人の法定相続分に3分の1を乗じた金額の範囲であれば、その権利を行使して払い出しを受けることができます。

具体的には、金融機関に対して、相続人の範囲を戸籍で示して上限金額の範囲内で預貯金の払い出しを受けることができます。

金融機関ごとに150万円が払い出しの上限額となります。

 

メリット・デメリット

メリットは、何らの法的手続きを要さずに簡易かつ迅速に預貯金の引き出しを受けることができるという点です。

デメリットは、当面の生活費や葬儀費用を緊急に支出するための制度であるため、多額の払い出しを求めることができない点です。

 

預貯金の仮払い制度により、遺産分割協議や同意を得るのが難しいときや、葬儀費用や生活費など早急に引き出す必要があるときなどに預貯金の引き出しができるようになります。

この制度以外にも今月施行されたものがありますので、順次ご案内していきます。
相続手続きについてはこちら

                                                      (出典 法務省ホームページより)

 

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