信託が開始したら

信託が開始すると、受託者は財産の分別管理義務(自身の財産と一緒にならないように、自分の財産とは分けて管理すること)が生じるため、各種財産の名義変更等の手続きが必要となります。

名義は受託者に変更されることになりますが、実質的な権利は受託者ではなく受益者となります。

 

不動産

信託法は、信託の登記又は登録をすることができる財産については、信託の登記又は登録をすること、

この信託の登記又は登録をする義務は免除できないとしていますので、

信託契約書を元に委託者から受託者への名義変更(所有権移転及び信託登記)を行う必要があります。

(法第14条、34条)

このときの登記の登録免許税ですが、所有権移転分は非課税で、信託分は不動産評価額の1000分の4です。
なお、土地については1000分の3となっています。

通常の贈与などの所有権移転登記ですと登録免許税は1000分の20ですから、それに比べると信託設定時の登録免許税は低くなります。

 

預貯金

委託者名義から受託者への名義変更はという手続きはできないので、金融機関で作成した信託口口座へ契約で定めた金銭を入金します。

信託契約書でも、委託者名義の口座を信託財産とする内容ではなく、「金銭〇〇〇〇万円」という記載となります。

この際、信託したからといって受託者が委託者名義の口座の入出金手続きはできないので、委託者本人が個人の口座か出金し、出金した現金を信託口口座へ入金する必要があります。

≫信託口口座について

 

上場株式・投資信託

一部の証券会社でしか取扱いがありませんが、証券会社で信託口口座を開設して、口座移管の手続きを行います。

投資信託の場合は、委託者が保有している投資信託を取り扱っていない場合などは移管の手続きがとれないため、一旦売却した上で、類似内容の商品に組み換えるといったことも考慮しましょう。

 

自社株式

自社株式を信託財産とした場合は、株式の譲渡に承認が必要な場合(譲渡制限株式)は、会社の承認を取り議事録を作成して、株主名簿の書換えと決算書別表2の株主の記載を変更する手続きを行います。

 

火災保険など

保険金支払い事由が発生しても保険金が支払われないトラブルを回避するため、建物についての火災保険や地震保険については、契約している保険会社へ確認を取り、契約者等を変更する必要がある場合には契約変更の手続きを行います。

 

不動産管理会社や賃借人への通知

収益不動産を信託財産とした場合は、以降の賃料などの管理は受託者が行うことになりますので、「対象物件が信託財産となったこと」、「管理権限が受託者となったこと」を伝え、賃料の振込先を受託者の管理する口座へ変更する旨の通知を行います。

賃貸借契約上の賃貸人の地位は、原契約を委託者から受託者へ承継されることとなります。

 

公共料金や固定資産税、入所費用などの引落口座の変更

受託者による一元管理のため、信託口座を引落口座とすることも検討します。

 

税務手続き

税務上の手続きとしては、信託契約の日の属する月の翌月末日までに「信託に関する受益者別調書」、「信託に関する受益者別調書合計表」を提出する必要がありますが、これには例外があり①受益者別に当該信託の信託財産の相続税評価額が50万円以下②委託者と受益者が同一である場合には提出が不要となります。

一般的には②の場合が多いかと思います。税務については税理士さんの意見も聞きながら進めましょう。

 

このように、信託を開始すると信託財産や契約の内容により、名義変更などの手続きが必要となります。

弊所では、信託契約後のサポートも行っておりますのでご安心ください。