認知症の妻に財産を渡しつつ次の承継者も決めておきたい
事例本人は現在、長男家族と同居しているが妻は認知症のため、老人ホームへ入所している。
推定相続人としては、認知症の妻と長男、二男の3名である。
本人は、自身が亡くなったときは介護費用も必要であると考え、すべての財産を妻へ渡したいと考えている。
妻も亡くなった後は、自宅と金融資産を長男へ、アパートを二男へ渡したいと考えている。
この事例の場合、妻へ財産を渡したいという目的は、遺言書を作成して妻へ相続させる旨の内容とすれば達成できるかもしれません。
しかし、認知症である妻は財産を相続しても自身でアパートや金銭の管理はできず、妻は認知症ではもはや遺言書を作成することはできないため、本人の希望である妻亡きあとの財産の承継先が決まらないことになってしまします。
その際は、長男と二男で遺産分割協議を行い財産の取得方法を決めていくことになりますが、その時の各財産の価値が違うなどで遺産分割が難航してしまうかもしれません。
家族信託を利用した場合
家族信託を利用する場合は、本人は長男と信託契約(受託者長男・受益者本人)を締結し、アパート・自宅・金融資産を信託財産として長男に託します。
本人が死亡すると妻が第2受益者として受益権を承継して、本人・妻が死亡したときに信託契約を終了するようにし、終了時に残った財産のうち自宅と金融資産を長男へ、アパートを二男へ引き継がせるといった内容にしておくことで、認知症により財産の管理ができず、遺言書を作成することができない妻へ財産を渡してその管理を長男が代わりに行い、「本人→妻→長男・二男」という本人が望む資産の承継の流れを作り、妻亡き後に遺産分割が難航することを防ぐことができます。
(信託財産としなかった財産については遺言書の作成を検討したり、亡くなる順序で不都合がないように設計します。)
受託者:長男
受益者:①本人 ②妻
信託契約の終了:本人・妻の死亡まで
残余財産の帰属先:自宅・金融資産は長男、アパートは二男
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