遺産分割はやり直しできる?

遺産分割協議は契約なので、相続人が全員合意すればやり直しは可能です。

しかし、税法上は一旦成立した遺産分割協議によって所有権が確定していると解され、遺産分割のやり直しによって新たに財産の移転があったとみなされ贈与税や不動産がある場合は名義変更のための登録免許税や不動産取得税が発生する可能性がありあす。

贈与税は高額となる場合が多いので、やり直しができるとしても税金面での考慮が必要です。

遺産分割のやり直しについては、「遺産分割が無効・取消」と「合意による解除」によるケースがあります。

遺産分割の無効・取消

遺産分割協議も意思表示に問題があったときについて民法の適用を受けます。遺産分割が無効・取消となる場合は以下のような場合があります。

①遺産分割協議に参加していなかった相続人がいる場合

本来、遺産分割協議は相続人全員が参加しなければならないので、一人でも相続人が参加していない場合は無効となります。

なので、不仲の相続人を除外して協議をした場合などは無効となります。

②遺産分割協議に相続人以外の者が参加していた場合

①とは逆に、相続人でない人が参加した遺産分割は無効となります。

例えば、相続欠格により相続の資格がない人が参加していた場合などは無効になります。

③錯誤・詐欺・強迫など意思表示に問題

騙されたり脅されて遺産分割を成立させて場合などは、遺産分割協議は無効や取消になります。

※またこれらの場合に、相続税の更正請求ができることとなるかと思いますので税理士などの専門家にも相談しましょう。

 

合意による解除

合意による解除は、相続人全員による解除です。全員の合意が必要なので一人でもやり直すことに反対している相続人がいる場合はできません。

遺産分割協議後に新たに財産が見つかったときは、成立した遺産分割協議の効力はなくならないので一からやり直すことはせず、見つかった新たな財産についての遺産分割協議を行います。

この場合、遺産分割協議書へ「後日、上記以外の遺産が判明した場合は、これについて相続人○○が取得する。」 と記載しておくと新たに財産が見つかったときでも再度遺産分割協議を経ず指定した人が取得することができます。しかし、後日高額の財産が見つかる可能性など記載する際は慎重に考慮しましょう。

 

③遺産分割の債務不履行を理由とする解除

遺産分割に加わった一部の相続人の債務不履行を理由とした遺産分割協議の解除はできないとされています。

例えば、長男が自宅不動産を相続する代わりに他の相続人へ500万円を支払うとした場合に、長男が支払いをしない場合です。このような時でも支払いをしないことを理由として遺産分割を解除することは原則できず長男へ支払を求めていくことになります。

このようなことにならないように、遺産分割の際は支払う相手の資力や信用を考慮し、先に支払いをしてもらうようにするなどの対策をしておいたほうが良い場合もあります。

この場合でも、債務不履行を理由とした一方的な解除はできませんが、相続人全員による合意での解除は可能です。